新規顧客獲得コスト:nCACの測り方
Priya Raghunathan
Eコマース・パフォーマンスマネージャー
新規顧客獲得コストは、一度も注文したことのない購入者を獲得するために払う金額です。ロイヤルカスタマーを抱えるDTCブランドでは、ダッシュボードに出ているCACよりずっと高いことがよくあります。ダッシュボードのCACは、リピーターも含めた顧客数で広告費を割っているからです。nCACは、リピーターを除いて計算します。
結論: 新規顧客獲得コスト(nCAC)は、ある期間のマーケティング費用の合計を、その期間に獲得した初回購入の顧客数で割ったものです。新規顧客は広告媒体ではなくストアのデータで数えましょう。目標nCACは、初回注文の限界利益に、回収期間内に確実に見込めるリピートの利益を加えて決めます。
nCACは、MERやPOASと同じ系統の指標です。予算の判断で媒体の数字よりストアの数字を使うべき理由はMERとROASのガイドで、以下で使う利益の層はECの限界利益で解説しています。
新規顧客獲得コストとは?
新規顧客獲得コストは、初回購入の顧客を1人増やすのにいくらのマーケティング費用がかかるかを、同じ期間の費用と顧客数で測る指標です。
- nCAC = マーケティング費用の合計 ÷ 期間内の新規顧客数
数字を左右する選択が2つあるので、一度決めたら変えないようにしましょう。
- どの費用を入れるか。 厳密な版では、すべてのマーケティング費用を数えます。全媒体の広告費、代理店やインフルエンサーへの報酬、アフィリエイトの成果報酬、クリエイティブの制作費です。範囲を絞った版では、有料広告だけを数えます。どちらでも機能しますが、途中で切り替えると機能しません。
- どの顧客を数えるか。 初回注文がその期間に入っている人だけを数えます。昨年購入して今月戻ってきた人は、広告をクリックしていても新規ではありません。
Googleのヘルプページライフサイクル目標キャンペーンの測定でも、顧客獲得コストを同じように定義しています。新規顧客に割り当てた広告費を、獲得したユニークな新規顧客数で割ったものです。
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ブレンドCACがリピーターの多いブランドを良く見せてしまうのはなぜか?
ブレンドCACは注文したすべての顧客で広告費を割るので、ロイヤルなリピーターが1人戻るたびに、獲得の費用はかかっていないのに数字が下がります。
効果を示すためだけにきりのいい数字で作った、1か月の説明用の例です。
- マーケティング費用:€30,000
- 注文した顧客:1,200人、うち初回注文は500人
ブレンドCACは€30,000 ÷ 1,200 = €25です。nCACは€30,000 ÷ 500 = €60です。このブランドは、新規購入者1人の獲得に、ダッシュボードが示す額の2倍以上を払っています。
リテンションが改善するほど差は広がり、そこに落とし穴があります。リピーターの層が育っていると獲得コストの上昇が隠れるので、ブレンドCACは何か月も横ばいなのに、nCACは上がり続けることがあります。リピーターの層が伸びなくなった時点で、問題が一気に表に出ます。
新規顧客を正しく数えるには?
新規顧客を正しく数えるには、自分が計測したイベントしか見えない広告媒体ではなく、購入者ごとの注文履歴をすべて持っているストアから数字を取ります。
Shopifyの「New vs returning customers」レポートでは、初回購入の顧客をストアで初めて注文した顧客、リピーターを注文履歴にすでに1件以上の注文がある顧客と定義しています。Shopifyによると、顧客レポートは対象顧客の注文履歴全体にもとづくため、過去の期間をあとで再集計すると、数字がわずかに変わることがあります。
数字をきれいに保つための確認は3つです。
- 重複した顧客レコードを統合する。 ゲスト購入で別のメールアドレスを使った購入者は、新規として2回数えられます。
- 獲得と関係のない注文を除外する。 卸売、交換品、スタッフの注文は新規顧客の数を水増しします。
- 広告費と同じタイムゾーンと期間を使う。 そうしないと、計算式の分子と分母が噛み合いません。
nCACは媒体のCPAとどう違うのか?
媒体のCPAもnCACも購入者1人あたりのコストに見えますが、データの出どころが違い、広告費について答える問いも違います。
| ブレンドCAC | nCAC | 媒体のCPA | |
|---|---|---|---|
| 計算式 | マーケティング費用の合計 ÷ 全顧客数 | マーケティング費用の合計 ÷ 初回購入の顧客数 | 媒体の広告費 ÷ 媒体が成果とするコンバージョン |
| 顧客数の出どころ | ストア | ストア | 広告媒体 |
| リピーターを含むか | 含む | 含まない | 除外しない限り含むことが多い |
| 各注文を1回だけ数えるか | はい | はい | いいえ(複数の媒体が同じ注文を計上しうる) |
| 対象の広告費 | 全チャネル | 全チャネル | 1つの媒体 |
| 向いている用途 | 全体の効率 | 獲得予算と目標 | 媒体内でのキャンペーン比較 |
媒体のCPAがnCACより低く見えやすい理由は2つあります。1つ目は、同じ注文を複数の媒体が成果として計上することがあるためで、詳しくは広告媒体によるコンバージョンの重複計上の記事で解説しています。2つ目は、別の設定をしない限り、媒体はリピーターの購入も新規購入者の購入と同じように数えるためです。
目標nCACはどう決めるのか?
初回注文の収益性は、新規顧客の初回注文が残す限界利益と、その顧客の獲得に払った金額を比べるものです。
- 初回注文の限界利益 = 初回注文の平均純売上 × CM2率
CM2は、純売上から商品原価、配送料、決済手数料、梱包、返品を差し引いたものです。説明用の例の続きです。初回注文の平均純売上は€80、CM2は45%なので、初回注文1件あたりの限界利益は€36です。
nCACが€60なら、新規顧客は1人ごとに€24の赤字から始まります。それが妥当な選択になることもありますが、リピート注文で確実に差を埋められる場合に限ります。目標は、どこまでの回収期間を受け入れるかで決まります。
- 初回注文で回収する: 目標nCACは€36以下。すべての新規顧客が初日から黒字です。
- 90日以内に回収する: この例で、新規購入者の30%が90日以内に€80の2回目の注文をするとします。期待できる限界利益は0.30 × €36 = €10.80増えるので、上限は約€47に上がります。
- さらに長い回収期間: コホートのデータが裏づけていて、待てるだけの資金がある場合に限って使いましょう。
利益率が変わったら目標を計算し直しましょう。値上げや仕入れ先の見直しで初回注文の限界利益が増えれば、より強気に入札する余地が生まれます。損益分岐点ROASの計算でも、同じCM2率を使います。
MetaとGoogleにはどんな新規顧客向けの設定があるか?
どちらの媒体でも、既存顧客が誰かを入札システムに伝えられます。ただし設定は媒体ごとに違い、これまでにも変わってきたので、最新の管理画面で確認してください。
Google広告。 ヘルプページ顧客ライフサイクルの目標では、新規顧客の獲得目標について、既存顧客より新規顧客に高く入札する「New customer value」や、新規顧客だけに入札する「New customer only」などのモードを説明しています。この2つのモードの対象として、Googleは検索、P-MAX、ショッピング、デマンドジェネレーションを挙げています。既存顧客は、顧客リストやウェブサイトのタグなどのファーストパーティデータで定義します。Googleによると、「New customer only」の広告でも、プライバシーや技術上の理由からリピーターに表示されることがあります(出典)。そのため、nCACは引き続きストアのデータで測りましょう。
Meta。 以前のAdvantage+ショッピングキャンペーンには、既存顧客に使う予算の割合に上限を設ける設定がありました。MetaのマーケティングAPIのドキュメントによると、既存顧客の予算割合の項目は新しいAdvantage+キャンペーンでは使えません。同様の調整をするために、Metaは1つのキャンペーンに2つの広告セットを置く方法を紹介しています。1つは既存顧客のカスタムオーディエンス向け、もう1つはそのオーディエンスを除外したもので、Advantage+キャンペーン予算はキャンペーン単位で設定します。より幅広い違いは、P-MAXとAdvantage+の比較で解説しています。
どちらの設定も、自社のnCACの代わりにはなりません。設定が変えるのは媒体が何に向けて最適化するかで、それがうまくいったかどうかを教えてくれるのはストアのデータです。
Wevionの役割
nCACを計算するには、すべての媒体の広告費の合計を、ストアの初回購入の顧客と同じ期間で揃える必要があります。その広告費を手作業で集めるところで、計算式はたいてい崩れます。
WevionはMeta、Google、TikTok、Taboola、Snapchat、Outbrainの広告アカウントを各媒体の公式APIで接続し、ShopifyやWooCommerceの注文と売上を広告費と並べてひとつのダッシュボードに取り込み、データを約15分ごとに同期します。nCACの広告費の側は、最初から合計された状態になります。
クロスチャネル分析では、期間とアカウントで絞り込み、すべてのアカウントをその日の為替レートで1つの通貨に換算できます。ベータ版のWevionの収益性分析は、ストアの商品ごとの原価と、一度設定した配送料と手数料から利益、利益率、POASを加えるので、初回注文の収益性の利益の側がわかります。結果をもとに動くには、クロスチャネルの予算再配分フレームワークをご覧ください。
Proプランの14日間トライアルで、自社の広告アカウントとストアで試せます。開始時にカードは不要です。7日目、またはトライアルのクレジットを使い切った場合はそれより前にカードの登録をお願いし、登録した場合のみ14日目から課金が始まります。
まとめ
- nCACは、マーケティング費用の合計を同じ期間の初回購入の顧客数で割ったものです。
- ブレンドCACはリピーターが増えるほど下がり、獲得コストの上昇を隠すことがあります。
- 新規顧客は広告媒体ではなく、注文履歴をすべて持つストアのデータで数えましょう。
- 媒体のCPAはキャンペーンの比較に、nCACは獲得予算の設定に使います。
- 目標nCACは、初回注文の限界利益に、回収期間内に確実に見込めるリピートの利益を加えて決めます。
- Googleの新規顧客の獲得目標や、Metaで既存顧客の広告セットを分ける方法は、媒体が何に向けて最適化するかを変えるものです。判断の根拠は、引き続きストアのデータです。
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