MERとROAS:DTCブランドが信頼すべき数字はどちらか
Priya Raghunathan
Eコマース・パフォーマンスマネージャー
MERとROASの比較は、月の広告費が数千ユーロを超えたあたりで、DTCの創業者なら誰もが向き合うことになるテーマです。ROAS(広告費用対効果)は、各広告媒体が自社のキャンペーンについて報告する数字です。MER(マーケティング効率比率)は、ストアの総売上をマーケティング費用の総額で割ったものです。この2つが一致することはめったになく、その差こそが予算判断を誤らせる場所です。
すでにROASが利益と一致しないことに気づいているなら、MERは信頼できる数字へ向かう最初の一歩です。本ガイドでは、2つの計算式、それぞれが誤解を招くケース、そして2つを並べて読む計算例を解説します。
結論
ROASは媒体が自社の広告の成果とみなした売上をその媒体の広告費で割ったものなので、1つの媒体の中でキャンペーン、広告セット、クリエイティブを比較するのに使います。MERはストアの総売上をマーケティング費用の総額で割ったものなので、マーケティング予算全体が元を取れているかの判断に使います。予算はMERで決め、キャンペーンはROASで調整しましょう。
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ROASとは何か、何を測るのか?
広告費用対効果(ROAS)とは、広告媒体が広告の成果とみなした売上を、同じ期間にその媒体で使った広告費で割ったものです。Googleのヘルプセンターでは、広告費1ドルにつき5ドルの売上という例が挙げられており、Google広告ではこれを目標ROAS 500%と表します。Meta、TikTokなどは同じ比率を5.0のような単純な倍率で表示します。
計算式はシンプルです。
- ROAS = 媒体がアトリビューションした売上 ÷ 媒体の広告費
ポイントは「アトリビューションした」という部分です。各媒体は、自社のアトリビューション期間と、クリックやビューに関する独自のルールで、どの注文を自分の成果にするかを決めます。MetaとGoogleが同じ注文を両方とも計上することを止めるものは何もありません。つまりROASは1つの媒体の中から見た景色であって、事業全体の景色ではありません。
ROASが得意なことに使う分には、それで問題ありません。1つの広告アカウントの中では、どのキャンペーンにも同じルールが適用されるので、広告セット、オーディエンス、クリエイティブを互いに比較してランク付けする公平な方法になります。
MER(ブレンドROAS)とは何か?
マーケティング効率比率(MER)は、事業全体の売上と、同じ期間にマーケティングに使ったすべての費用を比べる指標です。Shopifyは総売上をマーケティング費用の総額で割ったものと定義し、MERはブレンドROASとも呼ばれると説明しています。
- MER = ストアの総売上 ÷ マーケティング費用の総額
結果を左右する選択が2つあるので、一度決めたら固定しましょう。
- どの売上を使うか。 割引と返金を差し引いた、付加価値税(VAT)抜きのストアの純売上を使います。総売上を使うと数字がよく見えすぎます。
- どの費用を使うか。 厳密な定義では、広告費、代理店手数料、インフルエンサーへの報酬、アフィリエイト報酬、マーケティングツールなど、すべてのマーケティング費用を数えます。狭い定義では有料広告費だけを数えます。どちらも有効ですが、月によって混ぜるのは誤りです。
MERはストアを売上の唯一の情報源とするので、各注文は1回だけ数えられます。どの媒体も二重に計上することはできません。
なぜMERとROASは食い違うのか?
媒体のROASとMERが食い違うのは、そもそも揃うように設計されていないルールで、異なる売上を異なる費用に対して数えているからです。主な理由は次のとおりです。
- アトリビューションの重複。 TikTokの動画を見て、Meta広告をクリックし、Googleでブランド名を検索した購入者は、3つの媒体すべてに数えられる可能性があります。媒体の数字を足し合わせると、ストアが記録した以上の売上になります。
- ビュースルーの計上。 広告を見ただけでクリックしていない人の注文を成果にする媒体もあります。
- 総額と純額。 媒体は購入時点の注文金額を報告します。返品、キャンセル、返金はあとからストア側に反映され、広告アカウントには反映されません。
- オーガニックとリピート顧客。 MERには、メール、直接流入、リピート購入者など、どの広告媒体も成果として主張しない売上が含まれます。
- 欠けたシグナル。 プライバシー設定やトラッキングのブロックにより、実際の注文の一部はそもそも媒体に届きません。
最後の2つはMERを押し上げ、最初の3つは媒体のROASを押し上げます。多くのDTCアカウントでは最初の3つの影響が勝つため、媒体の合計はストアより良く見えるのが普通です。確認すべき症状はROASの数字が信用できないサインの記事でまとめています。
計算例:1か月、3つの媒体
以下の数字はあくまで説明用で、方法を示すために作ったものであり、実在のストアのデータではありません。金額は付加価値税抜きです。
| 媒体 | 広告費 | 報告された売上 | 報告されたROAS |
|---|---|---|---|
| Meta | €8,000 | €30,000 | 3.75 |
| €4,000 | €18,000 | 4.50 | |
| TikTok | €1,000 | €3,500 | 3.50 |
| 広告合計 | €13,000 | €51,500 | 3.96 |
次にストア側です。Shopifyでは、この月の割引と返金を差し引いた純売上は€42,000でした。€13,000の広告費に加えて、このブランドはインフルエンサーと代理店に€2,000を支払っています。
| 指標 | 計算式 | 結果 |
|---|---|---|
| ブレンドROAS(広告のみ) | €42,000 ÷ €13,000 | 3.23 |
| MER(全マーケティング) | €42,000 ÷ €15,000 | 2.80 |
| 新規顧客MER | €21,000 ÷ €15,000 | 1.40 |
媒体は、広告費€1あたりほぼ€4の売上を報告しています。ストアの数字では、マーケティング費用€1あたり€2.80です。さらに純売上の半分がリピート購入者によるものなら、マーケティング費用1ユーロのうち新規顧客からの売上につながったのは€1.40だけです。
2.80は良い数字でしょうか。これだけでは誰にも判断できません。このブランドが、商品原価、配送料、決済手数料、返品を差し引いたあとに純売上の40%を残せるとします。損益分岐点のMERは1 ÷ 0.40 = 2.5です。2.80なら、マーケティングは元を取れていて、給与や家賃に回せる分がわずかに残る状態です。自社ストアのこのラインを求める方法は、損益分岐点ROASの計算ガイドで紹介しています。
MERが誤解を招くのはどんなときか?
MERは2つの数字のうち実態に近いほうですが、ブレンドした数字は、分解して初めて見える問題を隠してしまうこともあります。次の点に注意しましょう。
- リピート購入者が数字を支える。 強いメールリストと忠実な顧客がいると、有料の新規獲得が静かに赤字を出していても、MERは健全に見えます。全体のMERと並べて新規顧客MERも追いましょう。
- 季節性とタイミング。 セールの週は広告費より売上が先に伸び、新商品の発売月は売上が入る前に広告費が先行します。同じ条件の期間同士で比較しましょう。
- どこを削るべきかは教えてくれない。 MERは事業全体でひとつの数字です。下がったときに原因を突き止めるには、媒体やキャンペーンのデータが必要です。
- 売上は利益ではない。 大幅な割引で上がったMERは、粗利を縮めている可能性があります。MERは他社のストアのベンチマークではなく、自社の限界利益と照らして読みましょう。
媒体のROASが誤解を招くのはどんなときか?
媒体のROASは、1つの広告アカウントの中での比較には信頼できますが、広告が利益を生んでいるかの絶対的な指標としては信頼できません。特に誤解を招くのは次のような場面です。
- 媒体の数字を足し合わせるとき。 媒体の売上を合計すると、共有された注文が二重に計上されます。
- 媒体同士を比較するとき。 アトリビューション期間やビューのルールが違うため、ある媒体の4.0と別の媒体の4.0は別物です。
- 返品が多いとき。 2024年12月、NRFとHappy Returnsは、米国の小売の返品額が2024年に8,900億ドルに達すると予測しました。媒体の売上からは、こうした返金は差し引かれません。
- 上位ファネルのキャンペーンが弱く見えるとき。 新規開拓の動画はラストクリックの成果がほとんど付かない一方で、指名検索や直接流入を支えていることがよくあります。ROASだけを見ていると、削るべきだという結論になります。
報告ROASと真のROASのフレームワークでは、媒体の主張ではなくストアの注文からROASを組み立て直す方法を解説しています。
MERとROASをどう組み合わせて使うか?
2つの数字をうまく使うには、それぞれに実際にこなせる役割を与え、毎週決まったリズムで、事業の異なるレベルで確認することです。
- 予算はMERで決める。 限界利益から損益分岐点のMERを求め、固定費の分を上乗せし、その結果をマーケティング全体の下限とします。
- 新規とリピートの売上を分ける。 全体のMERは問題ないのに新規顧客MERが下がり続けているなら、新規獲得のコストが上がっています。
- 媒体間の配分は慎重に。 MetaとGoogleとTikTokを比較するときは、媒体が報告する売上ではなく、UTMでタグ付けしたストアの注文を使います。
- 各媒体の中ではROASで調整する。 媒体の中ではルールが一貫しているので、キャンペーン、広告セット、クリエイティブは媒体のROASでランク付けします。
- できるようになったら利益に移る。 コストのデータが揃えば、拡大の判断ではPOAS(広告費あたりの利益)が両方に取って代わります。設定方法はShopifyのROASからPOASへの利益トラッキングのガイドをご覧ください。
Wevionの役割
MERと媒体のROASを並べて読むのはデータをつなぐ作業であり、スプレッドシートでやると、媒体が列を変えたり返金が遅れて反映されたりするたびに壊れてしまいます。
WevionはMeta、Google、TikTok、Taboola、Snapchat、Outbrainの広告アカウントに各媒体の公式APIとOAuthで接続し、ShopifyやWooCommerceの注文と売上を広告費と並べてひとつのダッシュボードに表示し、データを約15分ごとに同期します。ストアの売上と媒体が報告する成果が、並んで見える状態になります。
実利益、POAS、売上原価(COGS)などの利益指標は、Wevionの収益性分析でベータ版として提供しています。予算の配分を決めるのは引き続きあなたです。違いは、両方の数字を見ながら決められることです。
まとめ
MERと媒体のROASの違い、そしてDTCブランドがそれぞれをどう使うべきかを、次の5点にまとめます。
- ROASは媒体がアトリビューションした売上を媒体の広告費で割ったもの。1つの媒体の中でキャンペーンを比較するのに使う。
- MER(ブレンドROAS)はストアの総売上をマーケティング費用の総額で割ったもの。マーケティング全体が元を取れているかの判断に使う。
- 媒体のROASを合計すると、アトリビューションの重複、ビュースルーの計上、返金のせいで、たいてい成果を過大に見せる。
- MERはリピート購入者の陰に弱い新規獲得を隠すことがあるので、新規顧客MERも追う。
- MERはベンチマークではなく、限界利益から求めた自社の損益分岐ラインと照らして判断する。
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