Shopifyで広告の利益を計測する:ROASからPOASへ
Priya Raghunathan
Eコマース・パフォーマンスマネージャー
Shopifyで広告の利益を計測するとは、決して同じ場所にない2組の数字を結びつけることです。1つは広告媒体が使った金額、もう1つは割引、返金、商品原価、送料、手数料を差し引いたあとに、Shopifyの注文が実際に残してくれた金額です。ROASは後者を飛ばします。POAS(広告費用対利益)は、それを取り戻します。本ガイドでは、各数字がShopifyのどこにあるか、それを複数の媒体の広告費とどう組み合わせるか、そしてその結果を実行できるルールにどう変えるかを順に解説します。
まず考え方から知りたい方は、ROASと利益が一致しない理由の解説でそのギャップを詳しく取り上げています。注文データからROASを組み立て直す方法は、報告ROASと実ROASのフレームワークをご覧ください。本記事はその実践的なShopify版で、項目、計算式、具体例、そしてそこから導く判断を扱います。
結論
Shopifyで広告からの利益を計測するには、すべての商品とバリエーションに商品原価を入力し、Shopifyのレポートから純売上高(割引と返品を差し引いたもの)を取り出し、商品原価、自社で負担した送料、決済手数料、その他の変動費を差し引いて限界利益を求めます。それを全媒体の広告費の合計で割ったものがPOASです。1.0を超えていれば広告は利益で元を取っており、1.0を下回っていれば、ROASが何と言おうと元は取れていません。
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ROASがShopifyストアを誤らせる理由
ROASは売上を広告費で割ったものです。手早く状況をつかむには便利ですが、Shopifyストアでは少なくとも6つの点で広告の成果を過大に見せます。
- 割引。 20%オフのコードはコンバージョン率を上げ、ROASは横ばいを保つかもしれませんが、注文ごとの利益は縮んでいきます。
- 商品原価。 価格もROASも同じ2つの商品でも、仕入れや輸送を含めた原価が大きく異なることがあります。ROASはそれらを同じものとして扱います。
- 送料。 送料無料にしているなら、配送ラベルのコストは注文ごとに自社の負担になりますが、ROASはそれを一切見ていません。
- 決済手数料。 カード決済にはすべて手数料がかかります。1件あたりは小さくても、1か月分では大きな額になります。
- 返品と返金。 広告媒体は購入が起きた時点でそれを計上します。3週間後の返金は、媒体のROASには反映されません。
- 消費税・VATなどの税金。 ピクセルが送る内容によっては、広告媒体に報告されるコンバージョン値に、そもそも自社のものではない税金が含まれていることがあります。
そこに、複数の媒体が同じ注文をそれぞれ自分の成果にする媒体側のアトリビューションが加わると、ダッシュボードの数字は銀行口座からさらに離れていきます。始める前のセルフチェックには、ROASを信頼できないサインの一覧が役立ちます。
POASの計算式と限界利益
まずは限界利益から始めます。売上に連動して増減するコストを引いたあとに、各注文が残すお金です。
限界利益(広告費控除前)=純売上高 − 商品原価 − 送料 − 決済手数料 − その他の変動費
そのうえで:
POAS=広告費控除前の限界利益 ÷ 広告費の合計
この定義では、損益分岐点は1.0です。POASが1.3なら、広告費1ユーロが1.30ユーロの限界利益として戻ってきたことを意味し、0.30ユーロが固定費と利益に回ります。
もう1つの定義を使うチームもあります。広告費を差し引いたあとの利益を広告費で割る方法で、この場合の損益分岐点は0です。どちらでも構いません。1つを選んで書き残し、同じレポートの中で絶対に混ぜないことです。
同じインプットから、ほかに必要な2つの数字も得られます。
- 限界利益率=広告費控除前の限界利益 ÷ 純売上高
- 損益分岐ROAS=1 ÷ 限界利益率
変動費を引いたあとに純売上高の45%が残るなら、損益分岐ROASは約2.2です。これを下回るチャネルは、ROASがそれなりに見えても、生み出す売上1件ごとに損をしています。
Shopifyで各数字がある場所
各インプットの見つけ方を紹介します。Shopifyのレポートやプランの機能は変わることがあるので、何かを組み立てる前に、管理画面の現在のバージョンとShopifyのプラン比較を確認してください。
商品原価:「商品原価」欄
Shopifyの各商品とバリエーションには「商品原価」(Cost per item)の欄があります。これが商品原価のインプットで、多くのストア運営者が思っている以上に重要です。Shopifyの利益レポートのドキュメントにははっきりと、「利益は、販売時点で原価が記録されていた商品とバリエーションについてのみ報告されます」と書かれています。また、この欄は静的なデータであるため、利益の数字はその時点で記録されていた原価を反映するとも説明しています。
実務上の意味は2つです。原価が入力されていない商品は利益レポートから黙って外れ、利益率が実際より良く見えてしまいます。そして原価が変わったら、すぐに欄を更新してください。過去の注文は古い値のままだからです。
純売上高、割引、返品
Shopifyの財務レポートは、財務レポートのページに一覧があるように、売上を総売上高、割引、返品、純売上高、配送料、税金などの行に分けています。土台にすべき数字は純売上高です。Shopifyの利益レポートの用語では、純売上高を、総売上高から割引と返品を差し引いたものと定義しており、利益レポートのページでも「割引と返金は純売上高と利益率に影響します」と確認できます。税金は税務当局に納めるお金なので、売上に含めないでください。
利益レポート
Shopifyには、商品別の粗利益、バリエーション別の粗利益、注文別の利益率などの利益レポートがあります。ここでの粗利益は、純売上高から記録された原価を引いたものです。土台としては便利ですが、広告費は含まれず、それだけですべての変動費をカバーするわけでもありません。表示されるレポートはShopifyのプランによって異なる場合があるので、頼る前に自分のプランに何が含まれているかを確認しましょう。
送料と決済手数料
顧客に請求する送料と、配送業者に支払う送料は別の数字です。コスト側は、配送ラベルの請求書や配送業者の明細から取ります。決済手数料は、決済代行会社の入金明細や取引明細から取ります。注文ごとに取り出せない場合でも、きちんと検証した注文あたりの平均割合を使うほうが、まったく入れないよりずっとましです。
その他の変動費
梱包資材、フルフィルメント業者のピッキング・梱包料金、注文ごとに課金されるアプリの料金など、注文数に比例して増えるものはすべて限界利益に含めます。家賃や給与は含めません。これらは限界利益から賄う固定費で、目標POASを決めるときに改めて登場します。
複数の媒体の広告費とShopifyの注文を結びつける
Shopifyは注文を知っています。Meta、Google、TikTok、Taboola、Snapchat、Outbrainは、それぞれ自分の広告費を知っています。POASを出すには、その両方を、同じ期間、同じ通貨、同じタイムゾーンで、1つの表にまとめる必要があります。
実用的な手順は次のとおりです。
- 媒体ごとの広告費をエクスポートする。 同じ期間の数字を、ストアの通貨に換算して集めます。通貨の混在はよくあるミスの原因です。対処法は多通貨のROASが合わない理由のガイドで解説しています。
- Shopifyの純売上高とコストを取り出す。 同じ期間について、できれば注文別・商品別に集めます。
- まず全体のPOASを計算する。 限界利益の合計を広告費の合計で割ります。この数字はアトリビューションに左右されないので、最も信頼すべき数字です。
- 次にチャネル別に分ける。 タグ付けが一貫していれば、Shopifyの注文に付いたUTMのデータを使います。あるD2Cブランドがそれをどう実現したかは、広告からShopifyの注文までUTMをきれいに保つ方法で紹介しています。
- 最後に商品別に分ける。 全体の利益率は、赤字のSKUを隠してしまうからです。それで何が見えてくるかは、SKU別の利益漏れの分析をご覧ください。
複数の媒体を日々運用しているなら、この結合作業はより大きな運用習慣の一部です。詳しくは複数の広告媒体を一元管理する方法のフレームワークで解説しています。
アトリビューションの注意点
チャネル別のPOASは、その裏にあるアトリビューションの質で決まります。3つの注意点を押さえておきましょう。
- 媒体は重複する。 MetaとGoogleが同じ注文をどちらも自分の成果にすることがあります。媒体が報告する売上を合計すると二重に数えることになります。売上の唯一の情報源はShopifyの注文とし、各媒体からは広告費だけを使いましょう。
- UTMは一部の注文を取りこぼす。 保存したリンク、直接訪問、別のデバイスから来た注文には、キャンペーンのタグが付いていないことがよくあります。推測で割り振らず、「アトリビューションなし」の枠に残しておきます。
- ファネル上部のチャネルはラストクリックだと弱く見える。 TaboolaやOutbrainのネイティブ配信や、TikTokでの認知施策は、ほかの場所で完結する購買の流れを始めることがよくあります。ラストクリックのPOASだけでなく、より長い期間の全体のPOASで評価しましょう。
最も安全なルールは、判断は全体のPOASで行い、チャネル別のPOASは順位付けに使い、1週間分のラストクリックのデータだけでチャネルを削らないことです。
具体例
以下の数字は方法を示すために選んだ架空のものであり、実在のストアのものではありません。期間は1か月、広告媒体は3つ、価格はVAT抜きで表示しています。
広告媒体が報告する数字
| 媒体 | 広告費 | 報告された売上 | 報告されたROAS |
|---|---|---|---|
| Meta | €6,000 | €18,000 | 3.0 |
| €3,000 | €9,000 | 3.0 | |
| TikTok | €1,000 | €4,000 | 4.0 |
| 合計 | €10,000 | €31,000 | 3.1 |
Shopifyと請求書が示す数字
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 総売上高 | €25,000 |
| 割引 | −€2,000 |
| 返品 | −€1,500 |
| 純売上高 | €21,500 |
| 商品原価(商品原価欄) | −€8,600 |
| 自社で負担した送料 | −€1,800 |
| 決済手数料 | −€650 |
| 梱包資材とその他の変動費 | −€350 |
| 広告費控除前の限界利益 | €10,100 |
では計算してみましょう。
- Shopifyの純売上高にもとづく全体のROAS:€21,500 ÷ €10,000 = 2.15。3.1ではありません。
- 限界利益率:€10,100 ÷ €21,500 = 47%。
- 損益分岐ROAS:1 ÷ 0.47 = 約2.13。
- POAS:€10,100 ÷ €10,000 = 1.01。
ダッシュボードは3.1と言っています。実際のストアは広告について損益分岐点にあり、給与、ソフトウェア、家賃に回せるものは何も残っていません。
Shopifyの注文のUTMで分け、話を単純にするためにチャネル間で利益率が同じと仮定すると、状況はさらに鮮明になります。Metaのタグが付いた注文の純売上高が€12,000、Googleが€6,500、TikTokが€1,500、アトリビューションなしが€1,500だったとしましょう。限界利益率47%で計算すると、Metaは€6,000の広告費に対して約€5,640(POAS 0.94)、Googleは€3,000に対して約€3,055(POAS 1.02)、TikTokは€1,000に対して約€705(POAS 0.71)を返しています。報告されたROASが最も高かったTikTokが、POASでは最も低いのです。実際のアカウントでは、商品原価はSKUごとに異なるので、各チャネルの商品構成も反映させることになります。
判断のルール:損益分岐ROASと目標POAS
数字がそろったら、チームが毎週適用するルールに落とし込みます。
ルール1:ストアごと、できれば商品ラインごとに損益分岐ROASを把握する。 それを下回るものは、販売1件ごとに損をしています。上の例では、そのラインは約2.1です。
ルール2:固定費をまかなえる目標POASを決める。 固定費が月€2,000で、広告費を€10,000使う予定なら、€12,000の限界利益が必要なので、目標POASは1.2です。広告費や固定費が変わったら計算し直します。
ルール3:目標を上回ればスケール、損益分岐点と目標の間なら維持、損益分岐点を下回れば削減。 まず全体のPOASに適用し、次に上記のアトリビューションの注意点を踏まえてチャネルと商品に適用します。
ルール4:ファネル上部のチャネルには長めの期間を与える。 削る前に、30日間の全体の数字で見直します。
ルール5:キャンペーン単位だけでなく、SKU単位の利益率を見る。 赤字の商品を売っているキャンペーンは、どれだけ最適化しても目標POASには届きません。
よくある間違い
- 商品原価を空欄のままにする。 原価が記録されていない商品はShopifyの利益の数字から外れ、利益率をよく見せてしまいます。
- 純売上高ではなく総売上高を使う。 割引と返金は、実際に出ていくお金です。
- VATを売上に含める。 ROASもPOASも水増しされます。
- 媒体が報告した売上を合計する。 アトリビューションが重なり、注文が二重に数えられます。
- POASの定義を混ぜる。 POAS 1.2の意味は、広告費をすでに差し引いているかどうかで正反対になります。
- 送料と手数料を忘れる。 損益分岐と利益の差は、多くの場合ここにあります。
- 1週間で判断する。 返金や遅れて発生するコンバージョンはあとから入ってきます。直近の一定期間で見直しましょう。
Wevionの役割
手作業でもできますが、スプレッドシートは作った翌日には古くなります。Wevionの収益性分析(ベータ版)はShopifyまたはWooCommerceのストアに接続して商品原価を同期し、送料と手数料は設定画面で一度入力するだけで済みます。そのうえで、純売上高から商品原価、送料、決済手数料、追加コスト、広告費を差し引いて利益、利益率、POASを表示し、損益分岐POASの算出や、SKUごとの利益率の内訳も確認できます。
広告費はMeta、Google、TikTok、Taboola、Snapchat、Outbrainから取得し、約15分ごとにひとつの画面へ同期されるので、注文と広告費の結合はすでに済んでいます。何をスケールし、何を削るかを決めるのは引き続きあなたです。違いは、ROASではなく利益で判断できることです。
まとめ
- ROASは割引、商品原価、送料、決済手数料、返品、税金を無視するため、Shopifyストアでは広告の成果を過大に見せます。
- POASは広告費控除前の限界利益を広告費の合計で割ったもので、この定義では損益分岐点は1.0です。
- Shopifyでは商品原価は「商品原価」欄から取得され、利益は販売時点で原価が記録されていた場合にのみ報告されます。
- 売上の唯一の情報源はShopifyの純売上高とし、各媒体からは広告費だけを使いましょう。
- 判断は全体のPOASで行い、チャネルとSKUの順位付けにはアトリビューションしたPOASを使い、固定費をまかなえる目標を設定しましょう。
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