損益分岐点ROASの計算:計算式、計算表、目標の決め方
Priya Raghunathan
Eコマース・パフォーマンスマネージャー
損益分岐点ROASの計算が答える問いはひとつです。広告費1ユーロあたり、どれだけの売上を取り戻せば、その販売が赤字でなくなるのか。このラインを下回ると、広告経由の注文はすべて、残す利益より多くのコストがかかります。上回れば、広告は元を取り始めます。計算に特別なソフトウェアは必要ありません。6つの入力項目があるスプレッドシートで十分です。
落とし穴は、どの利益率を入れるかです。手軽な計算ツールの多くは粗利率を使い、ラインを低く設定しすぎます。本記事では、実態に即した計算方法を計算表とともに一歩ずつ組み立てます。媒体の数字が銀行口座の残高とずれる理由をまだ確認していない方は、ROASが利益と一致しない理由から読み始めてください。
結論
損益分岐点ROASは1を小数で表した利益率で割ったものなので、答えはどの利益率を使うかで決まります。簡易版は粗利率を使います。正確な版は、配送料、決済手数料、梱包、想定される返品も差し引いた限界利益率を使います。限界利益率が48%なら、損益分岐点ROASは1 ÷ 0.48で約2.1です。
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損益分岐点ROASとは?
損益分岐点ROASとは、広告経由の売上から得られる利益が、その広告に使った費用をちょうど賄う広告費用対効果のことです。この時点で、広告は固定費を考える前の段階で、利益も損失も生んでいません。
理屈は簡単です。変動費を差し引いたあと、売上1ユーロにつき40セントが残るなら、広告費€1を取り戻すには€2.50の売上が必要です。つまり次のようになります。
- 損益分岐点ROAS = 1 ÷ 利益率
利益率50%なら損益分岐点ROASは2.0、利益率25%なら4.0です。利益率が薄いほど、広告が越えなければならないハードルは高くなります。
計算に入れるのは粗利率か、限界利益率か?
入れる利益率によって、結果があなたを守るものになるか、都合よく見せるだけのものになるかが決まります。出力を信じる前に、慎重に選びましょう。よく使われるのは次の2つです。
- 粗利率 =(価格 − 商品原価)÷ 価格。手軽ですが、倉庫から顧客に届くまでのコストをすべて無視します。
- 限界利益率 =(純売上 − すべての変動費)÷ 純売上。Corporate Finance Instituteは限界利益を売上高から変動費を差し引いたものと定義し、変動費の例として顧客の注文の配送料を挙げています。
オンラインストアの場合、注文ごとの変動費には通常次のものが含まれます。
- 商品原価(仕入れ時の輸送費と関税を含む)
- 注文を届けるために自社が負担する配送料
- 決済手数料
- 梱包とピッキング・梱包作業
- 返品と返金の引当
広告費は利益率に含めません。損益分岐点ROASは、広告費と比べるための数字だからです。固定費も除外します。給与、家賃、ソフトウェアは注文が1件増えても増えません。各層の内訳はEC向け限界利益のガイドで詳しく解説しています。
スプレッドシートで損益分岐点ROASの計算表を作るには?
計算表は、商品ごとに1行の入力項目、限界利益の計算式1つ、最後の割り算1つで作れます。以下の数字はあくまで説明用で、方法を示すために選んだものであり、実在のストアのデータではありません。価格は付加価値税抜きです。
| 入力項目 | 値 | 備考 |
|---|---|---|
| 販売価格 | €60.00 | 平均割引適用後 |
| 商品原価 | €18.00 | 1個あたりの仕入れ総額 |
| 自社負担の配送料 | €6.00 | 1注文あたりの平均 |
| 決済手数料 | €1.15 | 1.5% + €0.25 |
| 梱包とピッキング・梱包作業 | €1.00 | 1注文あたり |
| 返品の引当 | €4.80 | 価格の8%と仮定 |
| 1注文あたりの限界利益 | €29.05 | 広告費を差し引く前 |
決済手数料の行は、Stripeが公表しているEEAの標準カードの料金、1.5% + €0.25を使っています。実際の決済サービスやカードの構成によって異なるので、自社の請求書の数字を使ってください。
では、2つの計算方法を並べて比べてみましょう。
| 方法 | 利益率 | 損益分岐点ROAS |
|---|---|---|
| 粗利率:(€60 − €18)÷ €60 | 70.0% | 1 ÷ 0.700 = 1.43 |
| 限界利益率:€29.05 ÷ €60 | 48.4% | 1 ÷ 0.484 = 2.07 |
粗利率の計算では、1.43を超えるROASなら黒字です。限界利益率の計算では、2.07が必要です。ROAS 1.8で回っているキャンペーンは、1つ目のシートでは勝ち組に見えますが、2つ目のシートでは、給与を払う前の段階ですでに1注文あたり約€4.30の赤字です。
スプレッドシートでは、入力項目をセルB2からB7に入れ、次の式を使います。
- 1注文あたりの限界利益:
=B2-B3-B4-B5-B6-B7 - 限界利益率:
=B8/B2 - 損益分岐点ROAS:
=1/B9
なぜ返品で答えがこれほど変わるのか?
返品は、多くの創業者が忘れがちなコストです。広告媒体が売上として計上してから数週間後に返金が発生するからです。2024年12月、NRFとHappy Returnsは、業界全体で米国の小売の返品額が2024年に8,900億ドルに達すると予測しました。
自社の返品率は、カテゴリーによってこれよりずっと低いことも高いこともあります。サイズの問題がある衣料品が一方の端、消耗品がもう一方の端です。自社の直近90日間の返金率を使い、返品の送料を自社で負担しているならそれも含めましょう。上の表で返品の引当だけを外すと、損益分岐点ROASは2.07から約1.77に下がります。
損益分岐点の上に、目標ROASをどう設定するか?
目標ROASは、固定費を払って利益を残せるだけ損益分岐点より上に置くものなので、ベンチマークではなく自社の固定費から決めます。計算式は損益分岐点の式を少し広げたものです。
- 目標ROAS = 1 ÷(限界利益率 − 利益目標率)
ここでの利益目標率とは、広告費を差し引いたあと、固定費と利益に充てるために残したい売上の割合です。限界利益率48.4%の計算例で見てみましょう。
| 広告費差し引き後の利益目標 | 計算 | 目標ROAS |
|---|---|---|
| 0%(損益分岐) | 1 ÷ 0.484 | 2.07 |
| 10% | 1 ÷ 0.384 | 2.60 |
| 15% | 1 ÷ 0.334 | 2.99 |
| 20% | 1 ÷ 0.284 | 3.52 |
Google広告では、結果をパーセントで入力します。目標3.0なら300%です。Googleのヘルプセンターでは、ビジネス目標と過去のROASに基づいて数字を決め、変更後は結果を判断する前に1〜2回分のコンバージョンサイクルを待つことも勧めています。
実務で役立つルールが2つあります。
- 同じ条件同士で比べる。 媒体のROASは返金前のアトリビューション売上で数えます。利益率に返品の引当をすでに含めているなら、それを踏まえて媒体のROASを目標と比べるか、より良い方法として、ストア側のブレンドROASで判断しましょう。違いはMERとROASのガイドで解説しています。
- 初回注文には計画的な例外を設ける。 リピート購入が続くことを前提に、初回注文のROASが損益分岐点を下回るのを許容するブランドもあります。偶然そうなるのではなく、回収期間を決めたうえで書面の判断にしましょう。
損益分岐点ROASの計算でよくあるミス
損益分岐点の誤りの多くは計算ではなく入力から生まれるため、計算式が正しくても、危険なほど間違ったラインが出ることがあります。次の点を確認しましょう。
- 割引後の価格ではなく定価を使っている。 20%オフのコードは、コンバージョン率だけでなく利益率も変えます。
- 付加価値税を売上に含めている。 価格と利益率の両方が膨らみます。
- カタログ全体でひとつの数字を使っている。 ストア全体の損益分岐点ROASは、自身のラインを決して越えられない商品を隠します。SKUごとの利益分析でそれらを洗い出す方法をご覧ください。
- 一度決めたら終わりにしている。 仕入れ価格、配送業者の料金、返品率は変わります。毎月計算し直しましょう。
Wevionの役割
損益分岐点の計算表を手作業で最新に保つには、毎週コストと広告費を書き出し直す必要があり、仕入れ先の請求書が変わった瞬間にシートは古くなります。
WevionはMeta、Google、TikTok、Taboola、Snapchat、Outbrainに各媒体の公式APIとOAuthで接続し、ShopifyやWooCommerceの注文と売上を広告費と並べてひとつのダッシュボードに取り込み、約15分ごとに同期します。損益分岐ラインの入力項目が、最初からひとつの場所でつながった状態になります。
さらに、現在ベータ版のWevionの収益性分析は、ストアの商品ごとの原価と、一度設定した配送料と手数料を使って、利益、利益率、POASを表示し、損益分岐点のPOASも算出します。設定の全体像は、ShopifyのROASからPOASへの利益トラッキングをご覧ください。
まとめ
信頼できる損益分岐点ROASの計算表を作り、それを目標に変える方法を、次の5点にまとめます。
- 損益分岐点ROAS = 1 ÷ 利益率。計算式より、どの利益率を選ぶかのほうが重要。
- 粗利率ではなく、商品原価、配送料、決済手数料、梱包、返品を差し引いた限界利益率を使う。
- 説明用の計算例では、粗利率から限界利益率に切り替えると、損益分岐点ROASが1.43から2.07に上がった。
- 目標ROAS = 1 ÷(限界利益率 − 利益目標率)。これで固定費と利益を賄える。
- 損益分岐点は商品ラインごとに求め、コストの変化に合わせて毎月計算し直す。
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