ECのLTV/CAC比率:DTCブランド向けガイド
Priya Raghunathan
Eコマース・パフォーマンスマネージャー
ECにおけるLTV/CAC比率が問うのは、ひとつだけです。新規顧客は時間をかけて、獲得にかかった費用より多くのお金を残してくれるのか。考え方はシンプルです。問題は、多くのストアがこの比率を利益ではなく売上で、コホートではなく平均で計算していることで、どちらの選択も実際より良い数字に見せてしまいます。
結論: LTV/CAC比率は、顧客生涯価値を新規顧客の獲得コストで割ったものです。DTCのストアでは、初回注文月とチャネル別のコホートから作った、決まった期間の限界利益ベースのLTVを、nCACと比べましょう。3:1はSaaSの目安として扱い、比率と同じくらい注意深くCAC回収期間を見ましょう。
比率のCACの側は、新規顧客獲得コストのガイドで解説しています。利益の定義はECの限界利益にもとづいています。CM2は、純売上から商品原価、配送料、決済手数料、梱包、返品を差し引いたものです。
LTV/CAC比率とは?
LTV/CAC比率は、顧客が選んだ期間に生み出す価値と、そもそもその顧客を獲得するために使ったお金を比べる指標です。
- LTV:CAC = 顧客生涯価値 ÷ 顧客獲得コスト
ストアでは、どちらの側も正確に定義する必要があります。
- LTV:初回注文から12か月など、決まった期間における顧客1人あたりの累計限界利益(CM2)。
- CAC:新規顧客獲得コスト。コホートを獲得した月のマーケティング費用の合計を、同じ月の初回購入の顧客数で割ったもの。
この定義で比率が1.0を超えていれば、顧客はその期間内に獲得コストを回収したことになります。残った分は、固定費と利益に回ります。
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LTVに売上ではなく限界利益を使うべきなのはなぜか?
売上で計算した顧客生涯価値は、注文のたびに事業から出ていくお金まで数えているので、変動費の分だけ顧客の価値を過大評価します。
12か月で€144を使う顧客の説明用の例を見てみましょう。CM2が45%なら、その顧客が残すのは€64.80です。獲得コストが€50なら、売上ベースの比率は2.9、限界利益ベースの比率は1.3です。前者は健全に見えます。後者は、その顧客が1年で自分の獲得コストを賄ったものの、固定費と利益に回せるのは€14.80しか残っていないことを示しています。
売上ベースのLTVは、コスト構造の変化も隠します。配送料が上がったり、リピート注文を取るために割引を加えたりしても、売上ベースのLTVは変わらず、限界利益ベースのLTVは下がります。実際に起きたことを反映しているのは後者だけです。
月別、チャネル別のコホートLTVはどう作るのか?
コホートLTVは、初回注文の月で顧客をグループに分け、その後の購入を追いかけます。こうすれば、比較するどの顧客にも、再購入までの期間が同じだけあることになります。
Shopifyの「Customer cohort analysis」レポートは、初回注文の日付で顧客をグループに分け、その後のリピート購入を追うので、注文数がわかります。その注文数を限界利益ベースのLTVに変える手順は次のとおりです。
- コホートを選ぶ。 初回注文が同じ月だった顧客全員です。
- 獲得チャネルを加える。 決済時に取得したUTMを使い、各顧客に初回注文のチャネルをタグ付けします。タグ付けの方法は広告からShopifyまでUTMをきれいに保つ方法のガイドで解説しています。
- 顧客1人あたりの限界利益を月ごとに合計する。 コホートのすべての注文の純売上にCM2率を掛け、コホートの人数で割ります。
- CACを決める。 コホートの最初の月のnCACを使うか、チャネルの広告費をそのチャネルからの新規顧客数で割ります。
チャネル別のコホートは、初回注文をどうアトリビューションするかに左右されます。ファーストタッチとラストタッチでは答えが変わり、その違いはファーストタッチとラストタッチのアトリビューションの比較で解説しています。モデルを1つ選び、それを使い続けましょう。
コホートの例はどうなるか?
下の表は、1月に初回注文をした顧客という、説明用に作った1つのコホートを追ったものです。数字は方法を示すために作ったきりのいい数字で、実在のストアのデータではありません。平均注文額は€80、CM2は45%なので、注文1件あたりの限界利益は€36です。1月のnCACは€50でした。
| 初回注文からの月数 | 顧客1人あたりの累計注文数 | 顧客1人あたりの累計純売上 | 顧客1人あたりの累計CM2 | CM2 − nCAC | LTV:CAC(CM2) |
|---|---|---|---|---|---|
| 0(初回注文) | 1.00 | €80 | €36.00 | −€14.00 | 0.72 |
| 3 | 1.25 | €100 | €45.00 | −€5.00 | 0.90 |
| 6 | 1.45 | €116 | €52.20 | +€2.20 | 1.04 |
| 12 | 1.80 | €144 | €64.80 | +€14.80 | 1.30 |
行を横に読み、次に列を縦に読みましょう。このコホートは3か月目から6か月目の間に回収を終え、1年後には限界利益ベースで1.3:1になります。別の月やチャネルのコホートの同じ行と比べれば、どの顧客にもっと払う価値があるかがすぐにわかります。
LTV/CAC比率の目安は3:1でよいのか?
3:1という数字はサブスクリプション型ソフトウェアの経験則で、ストアの目標ではなく、議論の出発点として扱うべきものです。
この数字の出どころとしてよく挙がるSaaS指標の著述家David Skokは、健全なSaaSビジネスでは3を超える比率としたうえで、比率そのものを目標として扱わないよう注意しています。SaaSには毎月の継続課金、測定可能な解約率、高い粗利率があります。DTCのストアには、不規則なリピート注文、物理的な商品原価、返品があります。同じ数字でも意味は同じではありません。
ストアにとってより重要なのは次の3点です。
- 期間。 5年間での3:1と12か月での3:1は、まったく別のビジネスです。期間は毎回明記しましょう。
- 利益の基準。 売上ベースでは健全に見える比率も、限界利益ベースでは大きく縮むことがあります。上の例では2.9に対して1.3です。
- 資金。 比率が高くても回収が遅ければ、リピート注文を待つ間に資金が尽きることがあります。
ECのCAC回収期間はどう計算するのか?
ECのCAC回収期間は、コホートの顧客1人あたりの累計限界利益が、その顧客の獲得コストを賄うまでにかかる時間です。
- CAC回収期間 = 顧客1人あたりの累計CM2がnCAC以上になる最初の月
リピートの傾向が安定していれば、手早い見積もりとして次の式を使えます。
- 回収に必要な注文数 = nCAC ÷ 注文1件あたりの限界利益
例のコホートでは、€50 ÷ €36で約1.4件です。このコホートは6か月目までに顧客1人あたり1.45件に達するので、回収は3か月目から6か月目の間になり、表と一致します。
Skokのエッセイでは、SaaSの目安として12か月以内にCACを回収することも挙げています。ストアでは、資金の状況から期間を決めましょう。リピート注文でお金が戻ってくるまで、どれだけの期間、獲得の費用を出し続けられるかです。
回収期間によって、広告の判断はどう変わるか?
獲得コストの回収に必要な注文数で、どこまで強気に入札できるか、どんなオファーを出せるか、どれだけ早くキャンペーンを判断すべきかが決まります。
初回注文で回収する場合。 すべての新規顧客が、決済の時点で黒字です。nCACが初回注文の限界利益を下回っている限り拡大でき、POASを使って短い期間でキャンペーンを判断できます。リピート注文はおまけであって、必須ではありません。資金面のリスクは低くなります。
3件目の注文で回収する場合。 新規顧客は1人ひとりが、リピート注文で返済されることを見込んだ貸し付けです。広告費を増やす前に信頼できるコホートのデータが必要で、その差を埋める資金の余裕と、信頼できるリテンション施策も必要です。キャンペーンは初回注文のROASだけでなく、連れてくる顧客の質で判断しなければなりません。初回注文が安くても、二度と戻らない購入者は回収できないからです。
その中間として、多くのブランドは2つの基準を設けています。損益分岐点ROASの計算で求めた初回注文の損益分岐点ROASと、コホートのデータから決めたnCACの回収上限です。
LTV/CAC比率のよくある落とし穴は?
LTV/CAC比率が崩れる原因の多くは、いくつかの入力の選び方にあり、事業の実態より比率を良く見せてしまいます。
- 短い期間を「生涯」と呼ぶ。 90日分のデータは顧客生涯価値ではありません。楽観的なリピート率で将来に引き延ばすと、比率が膨らみます。
- 割引を入れ忘れる。 大きな割引で取ったリピート注文は利益率が低くなります。すべての注文で割引後の純売上を使いましょう。
- 返品を無視する。 返金は遅れて発生します。返品が出そろったら、過去のコホートを計算し直しましょう。
- 新規とリピーターを混ぜる。 nCACではなくブレンドCACを使うと、獲得する必要のなかった顧客で広告費を割ることになります。
- ストア全体で1つのLTVを使う。 割引中心のチャネルから来た顧客は二度と注文しないかもしれず、別のチャネルの購入者は戻ってくるかもしれません。チャネル別に分けましょう。
Wevionの役割
実態に即したLTV/CAC比率を出すには、すべての媒体の広告費、ストアの注文、商品原価を同じ期間で揃える必要があり、これらのデータはたいてい3つの別々の場所にあります。
WevionはMeta、Google、TikTok、Taboola、Snapchat、Outbrainの広告アカウントを各媒体の公式APIで接続し、ShopifyやWooCommerceの注文と売上を広告費と並べてひとつのダッシュボードに取り込み、データを約15分ごとに同期します。どのコホートでも、CACの側をひとつの画面で確認できます。
ベータ版のWevionの収益性分析は、ストアの商品ごとの原価と、一度設定した配送料と手数料を同期して、利益、利益率、POASを表示し、SKUごとの利益率も示します。クロスチャネル分析は、すべてのアカウントをその日の為替レートで1つの通貨に換算するので、複数の市場の広告費も正しく合計できます。
Proプランの14日間トライアルで、自社の広告アカウントとストアで試せます。開始時にカードは不要です。7日目、またはトライアルのクレジットを使い切った場合はそれより前にカードの登録をお願いし、登録した場合のみ14日目から課金が始まります。
まとめ
- ストアのLTV/CAC比率は、明記した期間の限界利益ベースのLTVを、nCACと比べて使います。
- 売上ベースのLTVでは、1.3の比率が2.9に見えることがあります。
- LTVはストア全体の平均ではなく、初回注文月と獲得チャネル別のコホートで作ります。
- 3:1はSaaSの経験則であって、DTCの法則ではありません。
- CAC回収期間は、顧客1人あたりの累計限界利益がnCACを賄う最初の月です。
- 初回注文で回収できれば短い期間で拡大でき、複数の注文で回収するならコホートのデータと資金が必要です。
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