代理店の広告アカウント所有権:何を誰が所有すべきか
Marta Kowalczyk
エージェンシー・オペレーションズリード
代理店の広告アカウント所有権は、クライアントとの関係が終わったときに、広告アカウント、ピクセルの履歴、Facebookページ、オーディエンスを誰が持ち続けるかを決めます。代理店とクライアントの揉め事の多くは、最初の週に誰もこれを書面にしなかったことから始まります。解決策はシンプルです。アセットはクライアントが所有し、代理店はそれを借りて使います。
結論: 広告アカウント、ピクセルやデータセット、Facebookページ、カタログ、ビジネスポートフォリオはクライアントが所有すべきです。代理店は自社のビジネスポートフォリオを持ち、クライアントのアセットにはパートナーアクセスで入ります。Metaでは作成後に広告アカウントをポートフォリオ間で移せないため、代理店のポートフォリオでクライアント用のアカウントを作ると、そこから動かせなくなります。
具体的な設定手順はセットアップガイドで解説しています。日々の構成については複数のFacebook広告アカウントを管理する方法とMetaビジネスポートフォリオのガイドをご覧ください。Metaは現在ビジネスマネージャをビジネスポートフォリオと呼んでおり、本記事でもその名称を使います。
アクセス権限より所有権が重要な理由
普段の業務では、所有権とアクセス権限は同じように見えます。どちらでもチームはキャンペーンの配信、編集、レポートができるからです。違いが表に出るのは最悪のタイミングだけです。クライアントが離れるとき、支払いが失敗したとき、誰かが個人のFacebookアカウントを失ったときです。
Metaは大きな落とし穴をはっきり示しています。ビジネスアセットへのアクセスをパートナーに付与する方法のページには、ビジネスポートフォリオで作成された広告アカウントは、他社のポートフォリオへ移管できないと書かれています。代理店が自社のポートフォリオでクライアント「のために」作った広告アカウントは、ずっと代理店のものになります。
TikTokでも考え方は同じです。TikTokの広告アカウント作成ガイドには、ビジネスセンターはその中で作成された広告アカウントを所有すると記載されています。
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各アセットは誰が所有すべきか?
クライアントの広告運用に関わるアセットにはそれぞれ本来の所有者がいて、ECクライアントを担当する代理店の場合、その答えはほぼ必ずクライアントです。標準として次の表を使いましょう。
| アセット | 所有者 | 代理店のアクセス |
|---|---|---|
| ビジネスポートフォリオ | クライアント | 代理店はパートナー |
| 広告アカウント | クライアント | パートナー、タスク単位のアクセス |
| ピクセルまたはデータセット | クライアント | パートナー、広告と分析に使用 |
| FacebookページとInstagramアカウント | クライアント | パートナー、広告とコンテンツのタスク |
| 商品カタログ | クライアント | パートナー、広告のアクセス |
| 支払い方法 | クライアント | なし、または閲覧のみ |
| 代理店自身のビジネスポートフォリオ | 代理店 | 自社スタッフをユーザーとして登録(クライアントは含めない) |
| クリエイティブの作業ファイル | 契約で合意 | 通常は契約終了時に引き渡す |
Metaは1人が作成できるポートフォリオの数も制限しています。ビジネスポートフォリオの作成に関するページによると、個人アカウント1つで作成できるビジネスポートフォリオは2つまでで、ビジネスアセットは1つのポートフォリオにしか属せません。クライアントには、フリーランスの個人プロフィールではなく、社内の管理者のもとでポートフォリオを作成してもらいましょう。
ピクセルとデータセット
データセットには、Metaの配信が学習に使うコンバージョン履歴が蓄積されているため、揉めた契約終了のあとにクライアントが特に困るアセットになりがちです。Metaのデータソースのページでは、データセットはビジネスポートフォリオの中に置かれ、ほかのアセットと同じようにパートナーと共有されます。データセットはクライアントのポートフォリオに置き、代理店には利用するためのアクセスを付与してもらいましょう。
Facebookページ
Facebookページへのアクセスをリクエストすることは、所有することとは違います。Metaのページへのアクセスリクエストのページでは、所有権を得るのではなく、特定のタスクを行う許可を求めるだけだと説明されています。代理店に必要なのは、まさにそれです。
パートナーアクセスとは何か、どこまで求めるべきか?
パートナーアクセスは、誰もログイン情報を共有せずに、あるビジネスポートフォリオが他社のアセットを操作できるようにする仕組みです。Metaのパートナーアクセスのページによると、所有者は次のどちらかを付与できます。
- 完全な管理権限: パートナーはすべてを管理できるが、そのアセットを他社に共有することはできない
- 部分的なアクセス: 広告の管理やコンテンツの作成など、タスク単位の権限
パートナーを追加できるのは、所有側のビジネスポートフォリオで完全な管理権限を持つ人だけで、所有者には代理店のビジネスポートフォリオIDが必要です。実際に使うタスクに絞った部分的なアクセスを依頼しましょう。クライアントの広告アカウントで完全な管理権限を持つと、支払い方法のように触る必要のないものまで代理店の責任になります。その上で自社チームの範囲をどう絞るかは、媒体標準の権限と専用のアクセス管理レイヤーの比較で解説しています。
TikTokのパートナーも同じ仕組みで、クライアントが広告アカウント、ピクセル、カタログを代理店のビジネスセンターに共有します。手順は代理店のためのTikTokビジネスセンターのガイドをご覧ください。Googleでは、クライアントのアカウントをMCCアカウントにリンクしても、デフォルトでは管理上の所有権は付与されません。これが正しい出発点です。
代理店が所有する構成が理にかなう場合
代理店による所有は例外であり、広告費を使う前に双方が書面で合意した場合にだけ成り立ちます。典型的なケースは次のとおりです。
- メディアを再販している。 広告枠を購入し、パッケージ価格でクライアントに請求する形です。Metaに支払うのは代理店なので、アカウントを所有するのも合理的です。代理店が負う与信リスクはMeta広告の代理店の支払いのガイドで解説しています。
- 短期のテスト。 クライアントが本契約する前の2週間のトライアルで、あとでクライアントのポートフォリオに作り直す計画を合意している場合です。
- クライアントに技術担当者がいない。 その場合でも、代理店がアセットを預かるのではなく、クライアントが自分のポートフォリオを作れるよう手伝いましょう。
クライアントのアセットを代理店が所有する場合は、どのアセットか、契約終了時にクライアントが何を受け取るか、データをどれだけの期間保持するかを文書にしておきましょう。
クライアントが離れるとき、何が起きるか?
クライアントとの関係が終わるときこそ、オンボーディング時に下した所有権の判断が、良くも悪くも返ってくるタイミングです。クライアントがアセットを所有していれば、終了の手続きは短く済みます。
- 終了日と引き継ぎリストを書面で合意する。
- 必要なものを書き出す: アクセスが終わる前に、レポート、クリエイティブのファイル、オーディエンスの定義を書き出す。
- 代理店が作成した成果物を引き渡す: 命名規則やクリエイティブの元ファイルなど、契約に記載したもの。
- 残高を精算する: 代理店のカードや与信で広告費を払っていた場合。
- パートナーから自社を外すか、クライアントに外してもらう。
パートナーの削除に関するMetaのページでは、パートナーを削除すると、そのビジネスのアセットに付与されていた権限も取り消されることが確認できます。TikTokでも、パートナーを削除すると、割り当てられていたすべてのアセットとアカウントへのアクセスがなくなります。
代理店がアセットを所有している場合、終了はもっと大変です。広告アカウントは移せないので、クライアントは新しいアカウントを作り、代理店側のアカウントに紐づいた履歴を失います。クライアントがオーディエンスを持ち出す場合は、契約終了後にクライアントのオーディエンスを作り直す方法のガイドで、クライアント側の手順を紹介しています。
クライアント所有のアカウントをひとつの場所で運用する
クライアントがアセットを所有すると、代理店にとってはパートナー関係が増えます。たいていはクライアントごと、媒体ごとに1つずつで、日々の作業がいくつものタブに散らばっていきます。
WevionはMeta、Google、TikTok、Snapchat、Taboola、Outbrainに各媒体の公式APIとOAuthで接続し、所有権は各クライアントのビジネスポートフォリオやTikTokビジネスセンターに残したまま、すべてのクライアントをひとつのダッシュボードにまとめます。データは約15分ごとに同期されます。
チームのワークスペースとロールを使えば、媒体のログイン情報を共有せずに、ジュニアのバイヤーには担当クライアントだけへのアクセスを付与できます。Proプランの14日間トライアルで自社のアカウントで試せて、登録時にカードは不要です。
まとめ
- ビジネスポートフォリオ、広告アカウント、データセット、Facebookページ、カタログはクライアントが所有する
- Metaでは、作成後に広告アカウントを別のポートフォリオへ移せない
- TikTokビジネスセンターは、その中で作成された広告アカウントを所有する
- 完全な管理権限ではなく、タスク単位の部分的なパートナーアクセスを依頼する
- Facebookページへのアクセスをリクエストすることは、ページを所有することとは違う
- 代理店による所有が理にかなうのは、メディア再販か合意済みの短期テストだけ
- パートナーを削除すると権限が終わるので、レポートとファイルは終了日までに書き出す
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